【沖縄の地鳴り】

安保関連法案と辺野古〜安倍政権への嫌悪感

平良 知二


 自民党や社会党(連立)、民主党などこれまでの歴代政権に憤りを感じ、激しく反発したことはない。私はもともと怒りや義憤は内に閉じ込めるタイプであり、それに政治のいちいちに深く突っ込むほど政治的でもない。小泉政権の“刺客”選挙の時は興味深々、その行方を楽しんだりした。総じて現実政治へのかかわりは淡泊のほうだと自己診断している。
 が安全保障関連法案をめぐる今の安倍政権である。これまでの政権と違い、自分の感情がいらだっている。怒りというか、嫌悪感というか、敵がい心ばかりが募っていて、TVの国会審議を見る目が厳しくなっている。「何言っているんだ!」とつい荒れた声を飛ばしたりした。自身、少々驚いている。こんなこと初めてである。

 大多数の憲法学者が明確に「憲法違反」だと断じているのに、あれやこれや持ち出してきて言い逃れを図る。歴代の政府見解との違いや、最高裁判決から逸脱している点を突かれても「憲法解釈の整合性は保たれている」「憲法の範囲内である」と居直る。側近に至っては「法的安定性は関係ない」と暴言を吐く。憲法無視のこんな政権はなかったと思う。最悪だ。

 沖縄で「辺野古新基地」反対の翁長知事が誕生(昨年12月)したとき、新知事の要望に反し、安倍首相、菅官房長官は会おうとしなかった。長らく無視し続けた。政権が折れる形で菅長官との会談が実現したのは結局4カ月もあとのことであった。一国の首相、官房長官が政治的見解が違うからといって、一般的な表敬挨拶も受けないという事態はふつうありえない。安倍政権はそれをやった。自分の意に反する者への冷たい対応。今の法案審議で「憲法違反」の忠告を無視する態度と共通する。かたくなである。

 しかし、なぜ今ごろ集団自衛権なのだろう。尖閣諸島や南シナ海での中国の動きは確かに威圧的であり、北朝鮮の核問題など不安定化の要因はあるのだろうが、だからといって“米国の問題”に加担しなければならない理由はない。災厄が自らに降りかかる時は自衛権で対応すればいい。“米国の問題”が“自国の問題”に波及、災厄になるような事態には自衛権を行使するだけではないのか。集団自衛権云々と事態を深刻化するのは、憲法の形骸化と米国への“へつらい”と見て言い過ぎではあるまい。

 「辺野古新基地」もそうである。沖縄の民意ははっきりしているのに、いっこうに耳を貸さず、かたくなに「辺野古移設が唯一の解決策」と突き進む。知事選や「辺野古」反対派が全員当選した衆院選の結果を受け、米国に対し改めて話し合いを持ちかけてみようと試みる姿勢、残念ながらそういう動きがない。民意が入る余地がない。

 安倍首相と菅官房長官の顔を見るのが嫌になっている。率直な感情である。

 (筆者は元沖縄タイムス編集局長)


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