◇岡田一郎     

最近の日中韓関係によせて

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 最近の日本における「つくる会」教科書等に見られる反中国・韓国感情および中国・韓国における反日暴動の背景に、私は3ヶ国における反グローバリゼーション、反米感情を見る。すなわち、3ヶ国ともグローバリゼーションの名で推し進められるアメリカナイゼーション(アメリカ化)に対して反発心を抱いているにもかかわらず、それをアメリカに対して向けることが出来ないために、お互いにアメリカよりくみしやすい相手と思っている中国・韓国または日本に感情をぶつけているのではないかと思うのである。

 今日、2ちゃんねるを中心とする、若者がよく利用するネット掲示板などでは、親中派・親韓派は「売国奴」と罵倒されることが多い。特に、北朝鮮による日本人拉致が明らかになって以来、その傾向が強いと言える。しかし、奇妙なことに親米派は「売国奴」と呼ばれることは少ない。

 もしも、他国の利益のために、自国の権益を他国に売り渡すものを「売国奴」と呼ばれるのならば、中国に売り渡そうが、アメリカに売り渡そうが「売国」は「売国」ではないか。現に、アメリカは自国の畜産農家のために、日本政府に対して、アメリカ産牛肉の輸入禁止措置を緩和するよう要求している。

そして、日本政府の「親米派」はその要求に対して腰砕けになっている。だが、アメリカでの牛肉検査の実態がずさんなものであるという告発がなされているなか、アメリカ産牛肉の輸入に踏み切って大丈夫なのだろうか。もしも、日本の親米派が日本人の安全よりもアメリカの畜産農家の利益が大事と考えているのならば、これは明らかな「売国」である。

 2ちゃんねるなどのネット掲示板で右翼的な発言をする人々の多くは、昨今の不況に伴って思うように就職出来なかったりする、今日の社会に対して何らかの不満を持っている人々であろうと思われる。昨今の不況の原因の一つに、アメリカ政府の要求に基づいて、「規制緩和」「市場開放」の名においてアメリカ企業が進出しやすい状況を日本政府が率先しておこなっているという現実がある。

 安い中国製品が流れ込むことに不満を述べる若者は多い。ならば、アメリカ企業が強引に自分たちに都合の良い論理を振りかざして、日本市場に割り込んでくることには異を唱えないのか。日本人は意識的にか、無意識的にか、心のなかで、「アメリカには適わないが、中国・韓国はくみしやすい」と考えてはいないだろうか。

  私は最近の日本の姿はボスにはかなわないので、同僚や後輩にあたり散らす卑怯者の姿にだぶって仕方がないのである。

 中国・韓国も似たような事情ではないかと思われる。中国は経済発展がすさまじいが、その一方で、経済格差が拡大しており、また経済発展にもかかわらず、大卒の若者は就職難に悩んでいるということはよく言われていることである。

中国は建前の上では社会主義の国でありながら、実態は弱肉強食的なアメリカ的な資本主義社会と化しているように思われる。そのような社会では強者は目もくらむような巨富を手に入れるが、弱者は貧窮のどん底に落とされる。そのような社会に対する不満の一つの現われとして、今回の反日暴動が発生したのではないかと思われる。なぜ、アメリカに対してではなく日本か、といえば、中国人自身がアメリカナイゼーションの恩恵を受けていることを内心、自覚しており、アメリカに対する抗議は向けにくいと考えているからではないか。

そこで、今やアメリカの衛星国と化した感のある日本に怒りが向けられているのではないかと思う。現に、日本をアメリカの衛星国としている政治家たちと二言目には「日本の伝統」「愛国」を唱える政治家たちはイコールで結び付けられる。中国の人々は日本の排外的ナショナリズムに怒りを向けただけでなく、それと結びつく対米従属的な姿勢に怒りを向けたのではないか。

 韓国では一時、反米運動が盛り上がっていたが、最近では英語学習ブームが起こるなど親米的な傾向が強くなっているようだ。先日、テレビを見ていたら、IMFの管理下に置かれて以来、韓国では「英語が出来ないと、思うような就職が出来ない」という現実から、富裕な人々は子どもが幼稚園児のころから英語漬けの生活をさせているらしい。

 そのような環境に内心、忸怩たる思いを抱いている人々も多いはずである。しかし、外資系(アメリカ資本系)に支配される社会では反米は唱えにくい・・。このような思いが韓国の人々を走らせているのではないかと思われる。

上記のような日中韓3ヶ国の現状はアメリカにとって都合の良いものと思われる。アメリカにとってもっとも恐ろしいのは日中韓3ヶ国が協力して東アジア共同体を結成し、アジアからアメリカの影響力を駆逐することである。

そうならないためには、日中韓3ヶ国を互いに争わせていたほうが好都合…と考えるアメリカの深謀遠慮が、最近の日中韓関係の背後に見えて仕方がないのである。

 当面、アメリカは日本をえこひいきすることによって、日本と中国・韓国との対立をあおっていくのではないか。そのようなアメリカの戦略を見抜けず、「日本はアメリカに頼りにされている」と有頂天になっている日本の政治家および日本人のおめでたい頭の構造を改革しないかぎり、日中韓3ヶ国が真の友好関係を築くことは出来ないのではないだろうか。