■包囲どころか孤立の安倍外交             岡田 充

日台漁業合意は馬提案の具現化
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 スタートから来月で半年を迎える安倍晋三政権は、70%超の高水準支持率を維
持している。円安・株高が主たる原因のようだが、安倍の「躁状態」は昂じる一
方。麻生太郎副総理ら3閣僚の靖国神社参拝(22日)では、中国、韓国の反発を
「わが閣僚はどんな脅しにも屈しない」(4月24日 参院予算委員会)とかわし、
「憲法改正に関する中韓両国への説明は不要」(5月1日 記者懇談)とまで言い
切ってみせた。急務は、尖閣諸島(中国名:釣魚島)の国有化でこじれた中国と
の関係修復であろう。

 対話と協議の糸口を真剣に模索すべきなのに、もっぱら「中国包囲網」作りに
傾注している。成果が上がって中国が「折れてくれる」なら話はともかく、肝心
の「包囲網」はほころびが目立ち、安倍外交は孤立しているのが実相だ。「包囲」
とは、官邸と外務省、それに取り巻きのマスメディアの主観的願望に過ぎない。

■オバマ政権が懸念表明

 まず、この間の周辺外交を振り返ろう。初の日中首相会談への期待が高まった
5月の韓国での日中韓3国首脳会議は延期された。「成果が上がらなければ意味が
ない」という中国側が、開催時期で異議と唱えたためとされる。続いて4月23日、
韓国の尹炳世外相が、閣僚の靖国神社参拝に抗議して日本訪問を取りやめ、日韓
関係も冷却が続く。

 安倍首相の歴史認識をめぐっては、4月24日付のニューヨーク・タイムズが
「日本の不必要なナショナリズム」と題した社説を掲載。安倍政権が中国や韓国
との間で不要な摩擦を引き起こし「敵対心を無謀にあおっているように見える」
と批判した。

 社説は、安倍自身も靖国神社に供物を奉納したことを挙げ、中国と韓国の反発
は容易に想像できたはずだと指摘。北朝鮮の核問題に日中韓が結束して対処すべ
き局面で「取るべき行動ではない」と主張した。さらに「歴史の傷を悪化させる
のではなく、経済再生とアジアの指導的民主国家としての役割を強調した日本の
未来像を描く作業に力を入れるべきだ」と注文を付けた。

 批判はメディアにとどまらない。見かねたオバマ政権の国務省当局者は4月24
日までに、在米日本大使館を通じ、安倍政権の一連の動きが周辺国との関係にも
たらす悪影響について懸念を伝えた。国務省のベントレル報道部長は「公式な抗
議」ではないとした上で「中国や韓国のように他国も懸念を表明している。各国
間の強く建設的な関係が地域の平和と安定をもたらすことを、われわれは今後も
訴えていく」と述べ、安倍政権に中韓を刺激しないよう自制を促した。

■止まらぬ「躁状態」

 オバマ政権の自制要請にもかかわらず、安倍の「躁状態」は止まらない。高支
持率は劇薬なのだろう。第1次安倍内閣時代には自制した「歴史修正主義」の本
音が、次々と鎌首をもたげる。オバマ政権を3年余りウォッチし最近東京に戻っ
た同僚記者が、オバマの「アジア重視戦略」について次のように解説する。

 「そもそも、成長著しいアジアから経済的利益を得るのが目的。中国と対決す
るのが目的ではない。不必要な摩擦を中国と起こせば、アジアから経済利益を得
るという本来の目的にマイナスになる」。

 その後も安倍は、植民地支配と侵略を認めた1995年の村山富市首相談話を「安
倍内閣としてそのまま継承しているというわけではない」「侵略の定義は国際的
にも定まっていない」などとも発言。米紙ワシントン・ポストは26日、「侵略の
定義」発言に対し、「歴史を直視していない」と強く批判する社説を掲載した。
社説は、日本が韓国や中国を侵略したのは疑いない事実だと指摘。

 中韓が内政上の動機から反日感情をあおることがあるとしても、それは「安倍
氏が陥った自己破壊的な(歴史の)修正主義を正当化する理由にはならない」と
した。さらに、戦前の帝国主義への郷愁に浸っているようでは、正当な主張であ
る防衛予算の増額などを隣国に納得させたりすることも困難になる、と論じた。
このほか英紙フィナンシャル・タイムズ(4月29日)も「天皇崇拝の国粋主義的
カルトと分かち難く結び付いた靖国神社は、間違った場所」と断じる社説を掲載
したほどである。

 「産経新聞」(4月11日付)は、日本と台湾の漁業合意に関する官房長官談話
を伝える記事の中で「尖閣周辺海域における日本と台湾の漁業上の実利が一致し
たことで、台湾との共闘を目指した中国は孤立した形だ」と書いた。欧米メディ
アの論調をみれば、「孤立しているのはどちら?」と首を傾げざるを得ない

■尖閣国有化に反対していた米国

 安保偏重と歴史修正主義の「安倍イズム」を支持するため、すっかり濁ったマ
スメディアの目のくもりを晴らすような記事を紹介したい。オバマ政権で東アジ
ア政策を中心的に担っていたキャンベル前米国務次官補が、共同通信ワシントン
支局記者のインタビュー(4月9日配信)で、オバマ政権は、日本政府による尖閣
諸島の国有化に先立ち、中国が強く反発し危機を引き起こす恐れがあるとして反
対する考えを当時の野田政権に伝えていたと証言したという、ショッキングな記
事である。

 読者の頭には、尖閣国有化では米国の支持があったのではないかという固定観
念はないだろうか。中国の反発こそ異常で、日米同盟の強化によって、「夜郎自
大」な中国を孤立させ包囲網を敷くべきだという論調が多くのマスメディアに横
溢しているから、そうした認識を抱くのも無理はない。しかしオバマ政権中枢に
いたキャンベルの証言は、野田前政権が、中国側も国有化を容認するとの甘い見
通しを持っていただけでなく、米国の理解を得ることにも失敗していたことを示
す内容。記事の全ては掲載できないので、発言のポイントだけを紹介する。

*国有化前、日本政府から相談を受け、非常に緊密に協議してきた。
*日本側に国有化の方向に行かないように非常に強い忠告をした。
*なぜなら、日本側が(実効支配を強めるため)現状を変更しているようにみな
 される可能性があるからだ。
*国有化を進めれば、危機を引き起こす恐れがあると日本側に伝えた。
*われわれは警告したが、日本は(米国の忠告とは)異なる方向に向かう決断を
 した。
*日本は中国の支持を得たと考えたが、そうではないとの確信がわれわれにはあ
った。

■矛盾する佐々江発言

 では、当時外務省の事務方のトップ(次官)はどのような認識だったか。昨年
10月31日付けの「朝日新聞」は、佐々江賢一郎・新駐米大使のインタビュー記事
を掲載した。「尖閣国有化米反対せず」という大見出しの記事の中で佐々江は
「米政府は、日本政府が(国有化の)可能性を探っていることを知らされていた。
反対しなかった。日本が決めることだという立場だった」と述べている。

 キャンベル証言と真っ向から対立する発言。いったいどちらが本当なのか、読
者の判断に委ねたい。その大使は5月1日付の米紙ワシントン・ポストに、安倍首
相の歴史認識を批判した社説に反論する文章を寄稿し「日本政府は痛切な反省と
心からのおわびの気持ち、第2次大戦の全ての犠牲者に対して哀悼の意を表明し
てきた」と書いている。「忠僕」のつらい役回り。もしキャンベル発言が不正確
なら、是非反論を出して欲しいものだ。

 さて、安倍首相に日中関係を打開する意思が本当にあるのか。第1次安倍政権
時代に対中外交を担った関係者の一人に聞いた。「安倍には包括的な対中政策は
ない」とした上で、「安倍は中国との関係を重視しており、関係改善を考えてい
るのは本当だと思う。ただその改善は、安倍の望む条件での改善。その条件は言
えないが」とも付け加えた。第一次安倍内閣時代、安倍が訪中する上で、王毅元
駐日大使(現外相)と谷内正太郎元次官の連携は重要な役割を果たした。安倍も
谷内に全幅の信頼を寄せていた、と関係者は証言する。

 その谷内は、第2次内閣に「参与」として参加したが、安倍はあまり谷内の進
言を聞かないという。安倍は一体だれをブレーンに、対中政策を進めるつもりだ
ろうか。

■良好な両岸関係が大背景

 領有権争いは「棚上げ」以外に出口はない。日本と台湾が4月10日、台北で調
印した漁業合意をみて、その思いを改めて強くした。合意は、尖閣諸島(台湾名:
釣魚台)を取り囲む日本の排他的経済水域(EEZ)に共同管理水域を設け、台
湾漁船の操業を認めた。

 その一方、尖閣諸島から半径12カイリ以内には台湾漁船が入るのを認めないこ
とで「暗黙の合意」に達したのである。日本は中国、韓国とは漁業協定を結んだ
ものの、国交のない台湾とは17年に及ぶ協議にもかかわらず無協定状態が続いて
いた。この海域を「百年来の漁場」(馬英九総統)にしてきた台湾漁民にとって
は、遅すぎた合意と言えるだろう。一方、普天間基地とオスプレー配備で揺れる
沖縄からは、「(台湾への)譲歩の代償を沖縄が払わされた」(「琉球新報」4
月11日付社説)などと強い反発の声が聞こえる。

 合意実現の直接の理由は、中国と台湾の連携を恐れる安倍政権が、台湾に大幅
譲歩した結果である。メディアは「中台分断」の成果ばかりを強調するが、合意
実現の大きな背景には、良好な両岸関係があったことを忘れてはならない。

 調印式の10日は、与党国民党の最高意思決定機関である中央常務委員会が開か
れていた。馬英九主席(総統)はこの場で「政府は主権ではいかなる譲歩もせず
に、逆に漁業権はかなり増加させた。台湾と日本の関係を新たな段階に進めるこ
とができた」(4月11日付「聯合報」)と自讃した。馬英九の支持率は依然10%
台と低空飛行が続く。どちらかと言えば「緑」(野党)に近いある台湾財界人は
「馬英九が台湾人以上に現状維持の道を探っていることが分かった。李登輝さん
でも実現できなかったことを実らせたのだから」と、彼にしてはめずらしく馬に
高い評価を与えた。

 馬英九は昨年8月、 尖閣の国有化問題で日中対立が深刻化する中「主権は分割
できないが資源は共有できる」と、領有権争いを棚上げして対話による問題解決
を目指す「東シナ海平和イニシアチブ」を提案した。さらに9月には、提案を肉
付けして、海洋資源の共同開発に向けて日台、日中、中台の三種類の二者協議を
進めるよう求めるのである。台湾からみれば今回の合意は、実利の獲得のみなら
ず、馬イニシアチブ前進の第一歩でもあった。

 先の財界人が続ける。「馬は大陸との政治対話はやらないとはっきり言ってい
る。中国は漁業合意を非難すると逆効果になる。(北京は)台湾の利益は中国の
利益という考えをとっており、両岸関係が良好なことも幸いした」。「両岸関係
が良好」という財界人の指摘は重要な背景である。日本の大手メディアは、それ
を忘れ「中台分断の成果」ばかりを強調している。ひとつだけ例を挙げよう。

 「産経新聞」(4月11日)の、菅義偉官房長官の合意についての発言を伝える
記事である。「官房長官は10日夜、首相官邸で記者団に『歴史的な意味を有する
ものだ。心から歓迎申し上げたい』と語った。日本側としては、取り決め締結と
いう『アメ』を与え、尖閣に関する中国と台湾の連携を防ぎたい思惑がある」。
「アメを与え」という、台湾を見下した下品な表現の是非はここでは問わない。

 注目して欲しいのは、この原稿の見出しである。「中台分断に成功 官房長官
『心から歓迎』と満足げ」。官房長官がひとことも発していない「中台分断」を
主見出しにとる。記者や編集者の描いたストーリーに読者を引き込む世論誘導の
小細工。「禁じ手」である。

■一方的行動と日本批判

 「両岸関係」に話を戻そう。もし両岸関係が緊張していれば、北京が日台協議
に干渉し合意に横やりを入れても不思議はない。中国は今回の合意をめぐって、
台湾批判を一切控えている。だが、台湾が自らの存在をアピールし、日台関係を
強化することを決して快くは思っていないはずだ。

 中国の洪磊副報道局長は12日の記者会見で「(合意は)中国の主権と権益に損
害を与えるのではないか」との質問に「中日両国は1997年に漁業協定を締結して
いる。日本側が関係海域で一方的な行動を取ることに反対する。日本に対し、中
日共同声明で定めた原則と精神に基づき、台湾問題を処理するよう厳格に要求す
る」と述べた。直接の矛先は日本に向いているが、台湾への不快感も当然込めら
れている。

 両岸の関係改善が、日台関係の進展にもプラスの作用をもたらした―。これが
合意の大背景と言っていいだろう。まさに「Win・Win」である。東京と北京は
「無人の孤島」を巡って不毛な対立を続けているが、北京はより戦略的な観点か
ら、両岸の良好な関係維持に努めている。習近平は、台湾の現状維持を容認する
胡錦濤の「平和発展政策」を引き継ぐ方針であり、国際政治情勢と経済情勢で大
変動が起きない限り、今後10年間この政策は継続される。

 李登輝政権末期や陳水扁政権時代のように、両岸が政治対立と緊張に包まれれ
ば、中米関係はもちろん日中関係にもマイナスの影響が及ぶ。それこそ北京は孤
立してしまう。馬政権の当局者もそのことをよく承知している。良好な両岸関係
は、台日関係の空間拡大にプラスの作用をもたらしたのである。馬政権にとって
は大きなチャンスであった。

 そこに、日本からラブコールがかかった。昨年10月5日、当時の玄葉光一郎外
相は、台湾向けメッセージを発表、日台漁業交渉の早期再開を提案してきたので
ある。日本の外相が台湾向けに交渉を呼び掛けるメッセージを発表したのは、
1972年の断交以降初めてのことだ。当時、日本政府がいかに苦しい立場に追い込
まれていたか。

 「(玄葉提案は)台北と北京から足元をみられたのではないか」と、拙著「尖
閣諸島問題 領土ナショナリズムの魔力」(181頁)には書いたほどである。こ
れを受け11月末、東京で第17次第1回予備会合が開かれた。日台関係筋によると、
この会合では台湾側が尖閣の主権と、その領海内での操業という従来からの主張
をくり返し平行線をたどったという。

■台湾側に大幅譲歩

 転機が訪れたのは年明けの1月24日。台湾の保釣団体活動家の抗議船と、これ
を護衛する台湾海巡署の巡視船4隻が尖閣諸島周辺の接続水域に入り、海上保安
庁の巡視船8隻が放水した。これに中国海洋監視船3隻も現場に近づき,日中台の
公船が初めて尖閣周辺で対峙した。

 先の台湾財界人は、このケースと漁業合意の経緯を次のように説明する。「日
本では、馬が抗議船の出航を容認したという警戒が広がり、米国も台湾に止める
よう要求した。それで3月13日の第2回予備会合で、台湾側も合意に向け積極姿勢
に転じた。そうしたら、今度は日本が譲歩に譲歩を重ねてきた。Give・Giveだっ
た」。

 これに先立ち台湾外務省は2月8日、「釣魚台の争議で中国大陸と協力しない我
が国の立場」と題する声明を発表。この中で「大陸の介入により台日漁業交渉が
影響を受けている」と、北京の「妨害」を指摘したのも、漁業合意へ向けた馬政
権の前向きなサインだった。日台関係筋によると、第2回予備会合では台湾側は
尖閣領海内での操業という従来の主張はせず、北緯27度以南での暫定海域の設定
に方針を変更。日本側も台湾側の主張するEEZの「暫定執法線」を事実上認め
る譲歩を示した。実際に合意した協定では、「暫定執法線」より、日本側の海域
に「特別協力海域」を設けるなど、日本側は大幅に譲歩した。

 合意の概要を列挙する。(1)台湾側が自由に操業できる海域は、台湾の面積
のほぼ二倍に当たる7万4000平方キロ。このうち4530平方キロは、台湾側の「暫
定執法線」より日本側の海域で、台湾側が新たに拡大した海域(2)日本漁船も
操業できるが、日本の漁業監視船や巡視船など公船は入れない(3)八重山諸島
の北方に設けた「特別協力海域」では、台湾漁船の操業を認めるが、日本も取り
締まりの権利を放棄しない(4)日台双方は各4名からなる日台漁業委員会を少な
くとも年一回開催し、漁獲枠やトラブル発生時の対応など操業ルールを決める。
第1回会合は5月7日、台北で開催。操業ルールをめぐり対立は解けなかったが、
10日に合意は発効した。

 台湾漁業署の統計によると、この海域では2006年以来、計252隻の台湾漁船が、
日本側の公船の妨害に遭い、「違法操業」の漁船には、500万円相当の罰金が科
されていた。今後、この海域で操業する台湾漁船は年間延べ800隻以上で、4万ト
ン以上の漁獲量が見込まれるという。

■沖縄は安保偏重批判

 沖縄漁業者の反対の理由は(1)合意は地元の頭越しに結ばれた(2)台湾に大
幅に譲歩し、好漁場を取られた(3)漁獲高減少とトラブル増への懸念―などで
ある。尖閣の領有権に触れた論調はほとんどないことに注意すべきだろう。「琉
球新報」は5月6日付けの社説で「安全保障の名の下、沖縄の漁民の不利益を一顧
だにせず、また沖縄を“政治的質草”にした」と批判した。社説が特に問題にす
るのは、安倍首相が国会答弁で「アジアの安全保障環境の大きな前進になる」と
述べ、安保に偏重した動機を突出させた点である。

 漁業問題の出発点は、日本が1996年に国連海洋法条約を批准したことに伴い、
200カイリのEEZが重なる中国、韓国との間で、線引きを迫られたからであっ
た。2000年に発効した中国との新漁業協定は、尖閣諸島の北側の海域に「暫定水
域」を設け、中国漁船の操業を認めてきた。今回、台湾と合意した海域のすぐ北
に接続する海域である。この海域での日本のEEZは、尖閣諸島を基点にしてい
る。日中漁業協定や08年の東シナ海ガス田開発合意も、尖閣の領有権問題を目立
たせず、海洋資源を共有しようという精神に基づいていた。領有権争いの棚上げ
である。

 「琉球新報」が指摘するように、今回の合意の問題点は、安保を突出させ「中
台分断」を図って、「中国包囲網」形成の一環にするという狙いが透けてみえる
ことだ。そもそも「無人の孤島」をめぐる領有権争いに対し、米国を含めた第三
者の関心は高くない。「中国包囲網」などという不毛で無益な政策はやめ、中国
との対話と協議の糸口を真剣に模索すべきであろう。

  領土、主権は近代国際法上の排他的概念であり、正面から論じても妥協点は
見いだせない。この海は近代以前から沖縄と台湾、中国大陸の漁民が漁をする共
通の生活圏だった。安全保障の観点からではなく、生活者の視点からこの問題を
見直せば、新しい風景が広がってみえるはずだ。琉球新報は4月11日付け社説で
「(台湾側には)生活圏の海から『追い出された』との認識があるという。共存
共栄できる豊かな海を目指し、今後も地元関係者の声を尊重し、問題があれば内
容を柔軟に見直す姿勢で協議に臨むべきだ」と結んでいる。(一部敬称略)

  (筆者は元共同通信論説委員)
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