【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(3)

日本で宗教の話しがしづらいから理解してもらえない(1)

坪野 和子

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 《ゾロアスター教徒》

 巷ではクリスマスと忘年会のシーズンです。秋のイベント、そして年末行事。日本人ってどうしてイベントが好きなんだろうか??そして、何か理由をつけてお酒を呑みたがるのだろうか??という外国人目線で過ごすことが多い時期です。かつて流行した『日本全国酒飲み音頭』という歌はかなり深いなと感じる日々でもあります。シャイな日本人、ホンネと建て前を分ける日本人、空気を読む日本人、無用なくらい相槌を打ってコミュニケーションをはかる日本人、お酒と食事のチカラを借りないとやってらんない…ってことでしょうか?? それはいいことでも悪いことでもなく、日本のコミュニケーションの現実だろうと思っています。

 さて、日本のコミュニケーションで私が感じている問題点は別に存しております。それは「宗教と病気の話題はタブー」もしくは「宗教と政治思想の話題はタブー」です。宗教について話せない日本在住の外国人は、自分の生活を理解してもらうのにとても厳しい状況にあります。その外国人が年数重ねた大人であれば、さりげなく相手の「空気を読んで」伝えます。本当はもっと知ってもらいたいのだろうと。
 ですが、日本の学校教育では私学系列でないかぎり宗教の話題ストップ。ストップも悪くはないのですが、グローバル教育に欠けている部分にもなっていると感じています。宗教抜きで異文化理解は難しいからです。クリスマスも近いことですから、今回と次回は宗教の話題で…ですが、キリスト教ではなく、他の宗教です。

◆ 1.ゾロアスター教は光がカワイイのよ

 日本人と同じ入試で入学した生徒。彼女はイランをルーツにしています。厳密にいうともっと複雑な民族構成の両親を持ち、祖母が日本語をできる理由も日本人の血が入っているからではありません。こまかいことは後日。
 入学説明会で「豚とか給食大丈夫なの??」など質問したら「私は平気」という答え。数か月後、彼女は「私ペルシアン」…ああ!!ここで理解できました。「ああ…あなた…インドで言うところのパールシーなのね、ゾロアスター教徒??」「そうです、ろうそくの光がカワイイ、光のやさしさの宗教です」…ここが彼女と私をつなぐポイントでした。
 もう一度、彼女の宗教観を知ったのは「ラマダン」。彼女は「ラマダン」が楽しい行事だから宗教が違ってもやっていたのです。「夜、美味しいものを食べられるから楽しいじゃん!!」「そうね」「でも、ムスリムだと思われるの、イヤ」「いいんじゃない?? 日本人だってキリスト教徒でもないのにハロウィンやクリスマス楽しんでいるでしょ。だから、あなたもラマダンを楽しんでいいのよ」「あっそっかぁぁ、先生、ありがとう」

 実はゾロアスター教もお祭りが好き。イラン人≠イスラム教徒(ムスリム)ということを知っていた日本人がいたらもっと理解が深まるでしょう。彼女、どんな国・民族・言語でも対応できる介護士を目指しています。

◆ 2.ゾロアスター教って過去ではないんですよ

 日本語で「拝火教」って言い方…この子のイメージと違うんだろうと感じました。日本では世界史で「成立年代は前1200年代から前7世紀頃」「3世紀のササン朝の国教」「ゾロアスター教は、イスラーム教の浸透によってほぼ消滅してしまった」、現存しないと勘違いされそうな記述です。「唐代には祆教(けんきょう)と呼ばれ、マニ教、キリスト教とともに外国宗教とされていた」といった記述がされていて、試験前に漢字の読みを練習した記憶があります(結局出題されなかったので、40年ぶりくらいにこの字を見ました)。また松本清張は、飛鳥時代にゾロアスター教が伝来したと考える研究者の古代史ミステリー小説『火の路』を書いています。ここでは現在でも鳥葬が行われている場所を登場人物が訪れています。

◆ 3.あなたの近くのゾロアスター教

 ゾロアスター教に関しては、私の個人的体験で驚きました。日本在住のインド人、いや元インド籍のかた。明治時代に日本に渡って住み着いた印僑の子孫です。すでに日本国籍取得もしくは永住権取得です。人によっては元インド籍も途中パキスタン籍を経ている人もいます。彼らのパーティーに参加し、「牛しゃぶ」食べているので伺ったら「パールシー」。インド人でもヒンドゥでなければ牛食べているって、概念的に知っていてもインパクト強かったんです。目の前で豚を食べているパキスタン人を見たときほどではありませんでしたが。そういえば…ロックバンド「クィーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーさん。彼はインド人です。そしてゾロアスター教徒です。さらにタタ財閥の一族もゾロアスター教徒です。あら、目の前を Mazda の自動車が通ったわ。この原稿を打ち終わったら、リヒャルト・シュトラウスの『ツァラトーストラはかく語りき』でも聴こうかしら。次回は、宗教と食事。

 (高校日本語コミュニケーションアドバイザー&専門学校時間講師)

<インフォメーション> 「世界舞踊祭」
世界各地の民族舞踊の踊る博覧会。毎年さまざまな地域の舞踊の発表と紹介を行われています。
私、坪野は今回「チベット仏教・ダライラマのカーラチャクラ灌頂儀礼の音楽と舞踊」についてプレゼンテーションさせていただきます。チラシは私のブログのトップに掲載いたしました。チケットをご希望のかたは差し上げますので、ご連絡ください。Amalags@aol.com(@は全角を半角にしてください)
・日時:2017年1月9日(祝) 昼の部・夜の部
・場所:赤坂区民センターホール


最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧