【編集後記】 

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○今月、このメールマガジン「オルタ」は多くの執筆者のボランタリー、そ
して毎号のように増えつづける内外の読者に支えられ、創刊満3年を迎える
ことができた。各位に心から感謝したい。創刊の趣旨は「オルタ」の前身で
もある雑誌「余白」がかかげた『人間・国家・戦争』をより深く考えようと
いう呼びかけを継承し、直接的な契機は4年前の3月20日に始まったイラ
ク戦争の不条理に反対する市民の声を上げることにあった。  昔から「3
号雑誌」といわれるように、始めるのは易さしく続けるのは難しいのが定期
刊行物である。皆様のご支援をいただき、初心を忘れず市民の手によるデジ
タルメデイア「オルタ」を発展させていきたい。

○巻頭論文では、「オルタ」創刊満3年を記念して、久保孝雄さんに不条理
なイラク戦争に反対する私たちの「初心」の立ち位置を確認し、アメリカ時
代の終わりが始まろうとする今、私たちが何をなすべきかを論じていただい
た。

○いよいよ4年に1度の統一地方選挙である。最後まで民主党の候補者がな
く気をもませた東京都知事選もようやく浅野史郎氏が出ることで決着した。
浅野氏が立候補の決意を固めたのは『石原都政をやめさせてくれという悲鳴
のような全国からの声である』といっているが、私たちも是非浅野氏を応援
し傲慢な石原都政を倒したい。今月の「オルタ」はこの強い思いを生活クラ
ブ生協を母体とする地域政治団体東京・生活者ネットワーク運営委員塩田三
恵子さんの「変えなきゃ石原都政」に託した。
市民の力で浅野知事が実現すれば、石原知事にはできない東京・北京・ソウ
ルの東アジア首都サミットで共通の都市問題解決に協力しつつ国境の枠を
越え、アジア共同体形成の夢に向かって進んで貰いたいと思う。
(是非、浅野史郎WEBサイトhttp:www.asanoshiro.org/を開いて勝手連で
応援して下さい)

○先月に続いて河南省の鄭州大学 王鉄橋教授の研究成果である日中文化
差異「花から見た日中の違い」を掲載し熟読をお勧めするのだが、その前に
先月号で先生のお名前を王春橋と間違えたことを先生および読者に深くお
詫びし謹んで訂正いたします。
 
なお、この号では最新中国情報として北京に在住する谷洋二さんと深せん
で働く佐藤美和子さんに、街中が大きな爆竹の音に包まれたホットな “07
年「北京春節事情」を伝えていただいた。お二人からの春節便りとなったの
は佐藤さんが春節旅行で休載とのことで、たまたま北京に住む谷さんが東京
での美術展に来られた折、生活感のある最近の中国便りをとお願いしたから
である。
 中国は広く深く、沿海部と内陸部、都市と農村、など地域や職業によって
大きく違い、これが「中国」だというのは難しい。これからも、せめて北の
北京、南の深センの両方からだけでも、お便りをいただけたらと思う。

○今年の「オルタ」は編集方針に女性執筆者の強化を掲げたがその第一弾と
して塩田三恵子さんの石原都政批判を皮切りに、『危険な独身女性、フエミ
の嫌いな殿方』というユニークなタイトルで堀内真由美さんが登場し、さら
に遠くメルボルンの入江鈴子さんから「オルタのこだま」に2回目の投稿が
つづき、そして今月の吉田教授の『ガン闘病記』は春子夫人の交代執筆であ
る。いよいよ、これからの「オルタ」は、女性の目線でより深く「人間」が
とらえられ、必ず面白いものになる筈である。

○長期連載中の「臆子妄論」「回想のライブラリー」「人と思想」はそれぞれ
が好評で「オルタ」の格調を保っていただいているが、短期連載の吉田勝次
教授と春子夫人による「ガン闘病記」も戦いつつあるご夫婦の手記だけに健
康が気になる多くの読者に強い衝撃を呼んでいる。この連載終了後には大阪
の木村静江さんに認知症の家族を介護する「ユーモラスな家族の生活記録」
を短期連載としてお願いする予定である。なお、今月の高沢英子さんの「随
想」はご家族の急な介護のため休載となった。

○「オルタ」締め切り間際の17日、メルボルンの入江さんから、慰安婦問
題についての米国下院の審議や安倍発言に猛烈に反発する地元大新聞のコ
ピーを編集部に送ったと電話があった。日本の皆さんには電話やメールでは
1面でいかに大きく報道しているのかという実感が伝わらないからだという。
もともとオーストラリアには第二次大戦における日本軍による捕虜虐待問
題があり、ナーバスなところに安倍発言が火をつけたことになる。

入江さんがつきあっているメルボルンの韓国人コミニテーにも慰安婦に狩り
出された韓国女性がいて「女子挺身隊」という名の下に連れ出されたのだと
泣きなら訴えられたという。朝日の社説ではないが軍による強制があったか
なかったかという論議が本旨でなく日本という「国家の品位」が問われてい
るのであり、日本の政府やマスコミは世界の世論を読み誤り、国民を大きくミ
スリードしていると入江さんは憤慨していた。まったく同感である。

○去る3月15日、ジャーナリストの北岡和義氏が主宰し、政治学者の山口
二郎北大教授や、中北浩爾立大教授などがかかわり、江田三郎氏の没後30
年・生誕100年を記念して冊子を作る打ち合わせ会があった。旧社会党で私
たちが江田書記長とともに『構造改革』を提起したのは1960年の安保闘争
の前後であったから、ほぼ半世紀が経ったことになる。当時の江田氏は農民
運動出身でありながら、いかにも一ツ橋出らしく経営センスがあり説得力を
もった異色の幹部であった。国民的人気は高く、政府自民党も江田氏を強く
警戒していた。しかし党内守旧派との戦いに破れ、構造改革の路線で政府与
党と対峙する夢は消えた。
 
歴史にifはないが、最近ゴア氏が熱演し地球温暖化の危機を訴える『不都
合な真実』やロバート・ケネデーが暗殺される日を画いた『BOBBY』など
の映画をみて、彼らがブッシュやニクソンに代わって米国大統領になってい
たら、どのような米国になっていたのかと想う。かって江田氏は「反独占統
一戦線」という立ち位置から『構造改革』を主張し日本の革新を訴えた。も
し今、彼が政治指導者としていたならば日本の進路にどのような『構想』を
提起し国民的な統合をはかるだろうかと考えた。
                        (加藤宣幸記)