【編集後記】 

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◎ アメリカ大統領とマスコミとの間には就任後100日のハネムーン期間がある
といわれる。日本の鳩山新政権も発足してその3か月が過ぎた。新政権の出足は
快調で70%台と歴代2位の高支持率を得た。しかし首相個人の資金問題、郵政人
事、地球温暖化、事業仕分け、八つ場ダム、普天間、予算編成など次々とマスコ
ミに叩かれ、最近は60%を割った。しかし沖縄の普天間については「日米関係の
危機」を煽り、「日米合意」の履行を強く迫るというマスコミの声高な論調にも
かかわらず国民世論は意外に冷静で、時間をかけても県外・国外移転を支持する
という意見が50%を超え根強い。これを受けたかのように政府は先送り方針を決
め、地元の宜野湾市長は米軍の「グアム環境影響調査報告書」をもとにして与野
党の国会議員にグアム移転の可能性を説き始めている。
   
長い間、自民党政権の対米追従姿勢に慣れきってしまった日本のマスコミは来日
したゲーツ国防長官の恫喝や非礼を指弾しない。それどころかアーミテージ元国
務副長官、グリーン元ブツシュ政権安全保障会議日本部長など「日米安保マフイヤ
」と呼ばれる「知日派グループ」と組んで、「安保評論家」の常連を使い、彼
等が唱える「アメリカの意向」に沿って日本政府批判を続けている。情けない
話である。
   
近来しきりに産経・毎日にとどまらず大新聞の経営危機説が伝わる。国民目線か
らすれば、速報性ではデジタルメデイアに適わず、世界の現状認識では米国一極
時代の「日米関係」枠内に思考が停止し、発想が冷戦時代から抜け出せない大新
聞(東京新聞など地方紙は除いて)・TVの貧困な構想力を見るとその危機は当
然のように思える。
 
◎ 大事な局面にさしかかった普天間基地問題については先号(オルタ71号)
の吉田健正氏による『見直すべし沖縄パッケージ合意』論文に引き続き、今号で
も同氏による『安保基地の島・沖縄』を載せ、沖縄米軍基地の実態と移設の問題
点を詳らかにした。さらに【運動資料】としてアメリカ海軍が作った「合同グア
ム・プログラム・オフイス」で公表された『沖縄からグアムおよび北マリアナ・
テニアンへの海兵隊移転の環境影響評価・海外環境影響評価書草案』(約8100ペ
ージ)を吉田氏に緊急要約を要請し、米軍が普天間基地のグアム移転を予定して
いたことを明らかにして頂いた。この資料が普天間基地の県外・国外とくにグア
ム移転に役立っことを願いたい。
 
なお、この【運動資料】には載せられなかったが吉田氏からは「環境影響報告
書」には『基地建設にはグアム住民だけでは対応できないので外部からかなりの
工事労働者を入れる計画が書かれ、また他のサイトには基地工事に関する入札案
内もでており、米国の防衛産業もかなり加わっていると思われる。そして米上院
もグアム基地工事予算を承認したというのであれば、米国が簡単に計画を取り下
げるとは思えない。とのご意見が緊急に寄せられている。』

◎ アメリカの公文書で日米沖縄密約の存在が明らかになり、新政権の岡田外
相が検証を命じ、密約訴訟も進行するにつれ外務省元高官達が証言を始めた。こ
の問題は歴代自民政権の国民に対する嘘を白日の下に晒すだけでなく、次の段階
では非核三原則堅持の原則を確認するという重大な政治課題なのである。これに
ついてはオルタ67号の「沖縄密約事件の現在~情報公開請求訴訟をめぐって」に
引き続き、同じく北岡和義日大特任教授に「沖縄密約37年目の真実―普天間問題
の原点」としてご寄稿頂いた。   
   
◎ 今や無駄な公共事業の典型として、その政・官・業癒着の構図が国民の前
に明かされつつある八つ場ダムについては、オルタの先号で拓殖大学の関良基氏
にその代替案を論じて頂いた。今号でも民主党大河原雅子参議院議員に党公共事
業検討小委員会事務局次長として予算編成など超多忙の中を「八つ場ダムはな
ぜ中止しなくてはならないか?」との論考を頂戴した。大河原議員は生活者
ネットの東京都議会議員時代から八つ場ダム問題に取り組み、07年に参議院議
員になってからは党の実務担当者として活躍されている。

◎ 密室で行われてきた予算編成を「可視化」したとして多数の国民から支持
を受けた新政権の「事業仕分け」も個々に見ると問題が多い。勿論、捉える角度
でそれぞれに議論の余地はあるにしても「有機農業支援」についてはどうであろ
うか。
茨城県で有機農業に取り組みながら「農業は死の床か再生の時か」を「オルタ」
で毎月論じていただいている濱田幸生氏から「事業仕分け」の問題点を厳しく指
摘し、政策修正を強く要請する提言があった。安心・安全な食を求める消費者の
視点からだけでなく、環境先進国を目指す日本の農業戦略にとって、「有機農業」
の位置付けはどうなのか。今、政権の構想力・実践力が厳しく問われている。

◎ 11月20日東京・銀座の楼明館でロゴス社主催の『深津真澄さんの石橋湛山
賞を祝う会』があり出席した。オルタ執筆者深津氏の「近代日本の分岐点」(ロ
ゴス社刊)が第30回石橋湛山賞を受賞した祝賀会で司会者は朝日新聞主幹若宮啓
文氏、乾杯は松山幸雄氏などTVやコラムニストとして活躍している朝日新聞の
現役・OBなどが中心で30数人が集まり心から深津氏の受賞を祝った。

◎ 12月8日東京・田町の東京工業大学キャンパスの第4回公共哲学カフエ・「
鳩山内閣と日米同盟の行方」というシンポジュウムに参加した。メーンスピーカ
ーは小泉政権のイラク出兵に反対し、レバノン大使を辞職した元外務官僚天木直
人氏でゲストスピーカーは「週刊金曜日」で健筆を振るう成沢宗男氏、コメント
は千葉大宮崎文彦氏、コーデイネーターは赤羽高樹氏などであった。

◎ 12月11日東京九段で初岡昌一郎氏が主宰する「ソーシアルアジア研究会」
がありILO理事中嶋滋氏の「国際労働運動とILO」という報告があった。会
には国際労働問題の専門家が多数参加し活発な討議が行われた。なお、この報
告の要旨は「オルタ」1月号に掲載の予定である。 

◎ 12月12日東京・明治大学で、「伊達判決を生かす会」と「現代史研究会」
が共催する「日米密約の全面公開を要求する集会」に参加した。砂川基地拡張反
対闘争・伊達判決・米国公文書発見・情報公開などについての報告と各団体から
の意見表明があり、琉球大学教授我部政明氏(伊達判決に関する米国政府公文書
発見者)による「日米密約をめぐってその意味を問う~砂川・安保条約・沖縄~
」という基調講演があって最後に集会アッピールを採択し盛会裡に終了した。

◎ 久保孝雄氏のオルタ69号の論文『「地殻変動」はなぜ起きたか。-「政権
交代の意味を考える-」が中国の幹部向け雑誌「領導者」(第30期)に訳載され
た。これで2回目だが前回(オルタ61号「日本沈没を防ぐ年」)の論文が高く評
価されたからだというから嬉しい。オルタ71号吉田健正氏の「見直すべし沖縄パ
ッケージ合意」もロゴス社発行の雑誌「Plan B・25号」に転載される。また関良
基先生のブログにオルタはリンクされた。関先生のブログは建設的な提言が満載
されているのでオルタの読者からも大いにアクセスして欲しい。
http://blog.goo.ne.jp/reforestation/m/200912

◎ 今月で西村徹先生の「臆子妄論」・荒木重雄先生の「宗教民族から見た同
時代世界」はしばらく休載となり「臆子妄論」はタイトルを変え随時掲載となり
ます。長い間のご執筆を読者とともに心から感謝いたします。

◎ 今年も毎月無事に定日発信をすることが出来ました。執筆者・HPを更新
してくださる西風陽子・増野潔氏、そして励まして頂いた読者各位に深く感謝
致します。来年も一層の充実に努めますので宜しくお願いします。
皆様よいお年をお迎え下さい。

               (加藤宣幸記)

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